JSHRMでは、会員が自発的にテーマを設けて立ち上げ、会員同士の悩みを解決し自己研鑽に励む「自主研究会」活動を行なっています。「自主研究会おじゃMap」では、各自主研究会の活動内容や様子を紹介します。

 2021年3月8日JSHRMの新しい自主研究会アカデミア・プラクティス研究会がキックオフされました。厚生労働省から4月に事業創造大学院大学に転じた浅野浩美執行役員が主宰します。働くことをめぐる環境が変化する中で、人事領域に関係する研究が次々と出されています。本研究会では、実務の現場でどう活かせるか、という観点から、アカデミックな研究や最新の議論を検討し、実際に現場の課題にトライしてみようという意欲的かつチャレンジングな研究会です。具体的には、気になるテーマを定めて、関連する専門誌記事や論文を読み、具体的にどう使えるか検討し、できれば、検討した内容や結果の発信を目指してみたいとのことです。キックオフミーティングでは、山崎副理事長より、研究会でターゲットとしたい研究領域や最近のトレンドについて概説頂きました。参加された皆さんは、多様なバックグラウンドをお持ちで、実務経験は勿論のこと、アカデミック領域についても興味関心をお持ちです。

 アカデミアとプラクティス、つまり学究・研究と実践をブリッジ(架橋)し、相乗効果を発揮できるか。研究者と実践家のコミュニケーションを活発化し、課題や問題を共有し、新たな知見(イノベーション)を創発できるか。この研究会がターゲットとすることの意味は重要です。トム・ニコルズは、著書『専門知は、もういらないのか』の中で、無知な人ほど自分を客観視する能力に欠けるため、自分の無知や誤りに気づけない。加えて確証バイアスによって、陰謀論を信じたり、都合の良いネットの情報や偏った報道を受け入れたりしてしまい、ますます排他的になってしまうと指摘しています。フェイクニュースや反知性主義という言葉に象徴されるように、私たちの周囲には真偽の怪しい情報が溢れています。人事分野においても同様です。こうした環境下にあるからこそ、専門知というものの本質と重要性を正しく理解し、実践の場で活かす術を身につけるべきではないでしょうか。

 学究・研究と実践。この二つのベストミックスを模索(当然溝や壁が存在するのも事実)し、研究会メンバーの企業(事業)や組織を成長させることが期待されることでしょう。今後のアカデミア・プラクティス研究会に注目です。

JSHRM 執行役員『Insights』編集長 岡田 英之